SOLID CONNECTION木村さんインタビュー

今週は先週ご紹介したブランド SOLID
CONNECTION
ディレクターの木村シンイチさんにメールインタビューをしました。
先週のおさらいになりますが、木村さんはメッセンジャー会社Cyclexの代表であり、メッセンジャーバッグブランドRESISTANTも手がけられ、今回のSOLID
CONNECTIONは株)フェニックスのブランドであるINHABITANTのサイクルラインとして今年スタートしたばかりとなっています。

◎CYCLEXは、おそらく今やられているいろんなプロジェクトの出発点となったのでは ないかと思いますが、いつ頃どのような想いで始められたのですか。

木村:サイクレックスははメッセンジャーサービスの会社。まず、これが軸になってる。
だけど、開業の時点で「自転車でどこまで出来るか?」を追求しようと思ってまし た。
社名の意味は、サイクル+エクスプレスの略でサイクレックスなんだけど、サイクル +エクストラやサイクル+エキスパートっていう意味も含んでいる。

開業は2001年だけど、会社を作りたいと思ったのはその3年前くらいから。
会社っていうよりは「特攻野朗Aチーム」とか、「俺たちは天使だ!」の麻生探偵事 務所みたいな感じをイメージして、少人数だけど個性的な奴等が集まっている最強
チームみたいなのを理想として始めました。
その時たまたま自分がメッセンジャーだったからメッセンジャーの会社を作ったけ ど、もしラーメン屋でバイトをしていたら、最強のラーメン屋を目指していたかもし
れないし、夢中になれる事で、極めたくなるような仕事ならなんでも良かったのかも しれない・・・・だから、そんなに明確なビジョンを持っていたか?と言われたら全
然無かったと思う。
人生そのものが行き当たりバッタリの出たトコ勝負!みたいな感じなので・・・・。

でも、その時、確かに感じていた事は、メッセンジャーは世界の都市に必ず存在する モノなのに、東京は何故かバイク便ばっかで、だから東京でも交差点で信号待ちして
たらメッセンジャーが必ず居るくらい増えりゃ良いのにね。って。
それで、世界のメッセンジャーが東京を見て、「東京イイねぇ。」って言わせたいと は思ってましたね。

◎ RESISTANTは高い評価を得ているバッグブランドですが、木村さんの中ではメッセ ンジャーサービスからモノづくりまで自転車を軸とした都市型ライフスタイルに必要
とされるものをトータルに提供していかれるビジョンだったということなのでしょう か。

木村:メッセンジャーをやっていると、バッグなんか特に既存の製品だと全然ダメで、 「もっとここがこうなってくれたらイイのに、なんでソコんトコわかんないワ
ケ?」って思う事が多くて、作ってる人に会う機会があったら「ココをこうしてくれ!」と言いたい!と思ってい たんだけど、なかなか会えるモンでもないし、結局は市販品を改造する訳ですよ。
D.I.Yカスタムですね。基本的にモディファイするのが好きなので、自分が持つ物は 自分仕様にしたい。
子供の頃、棒切れ振り回して草とか刈って遊びませんでした?
その時ヤケに調子のイイ棒に巡り合った時の感動って言うんでしょうか・・・・あの 感じ、あの愛着感。アレを求めています。
都会で生きて行く上で、あの調子イイ棒切れがバッグに変っただけなんです。
「今日はドシャブリだけど、俺のバッグはバッチリ防水だからヘッチャラだ。」とい うハイパー感と言うのでしょうか、これさえあれば逞しく生きて行けるって感じのモ
ノが作りたいんです。

それから、良い仕事するには良い道具じゃないとダメだし、一人前になったら自分の ギャラで良い道具を揃えるってのは重要な事だと思います。
一日中雨なのにコンビニの500円カッパで凌いで、でもそれってムレムレのビジョビ ショになるからけっこうめげる。
500円のカッパは安いようだけど、一日で使い捨て・・・これって安いようで損して る。
そんなのに懲りて、本格的なレインウェアを買おうとして、でも予算が足りなくてゴ アテックスは買えなかったので、それっぽい通称シミテックスのカッパを買ったんだ
けど、全然ダメダメで、物凄く裏切られた感があった。やっぱり本物を買わないと結 局は損するんだなと・・・。
だからゴアテックスには憧れを通り越してコンプレックスに近い感覚を持ってまし た。
結局、メッセンジャーを始めてから、ゴアテックスのアウターを買うのに3年かかり ました。
あの感動は今でも忘れられません。

だから、自分が作るものは見た目だけそれっぽいのに内容が伴わないというモノは絶 対に作りたくない。
ちょっと高く感じるかもしれないけど、長い目で見れば賢い選択になる様な本物を目 指しています。

◎今年はいよいよSOLID CONNECTIONを立ち上げられましたが、どんなブランドにして いかれるのか教えていただけますか。

木村:まぁ、ブランドというか、inhabitantの中のラインなので、なんでも好き勝手にやれ ちゃう訳でもないので、明言は難しいですが・・・・。
もう気が付いていると思いますが、自分はあまりお洒落に興味は無いんです。
でも、ワークやミリタリーの機能性重視のモノはメチャクチャ惹かれます。
ファッションデザイナーってワケでもないんで、どちらかと言えばインダストリアル デザインに近いのでは無いでしょうか?
機能を突き詰めた結果、それが美につながる・・・・というのは理想ですが、あまり その先の美を意識しすぎると、結局は余計な意匠が介入して来ちゃうので、
作る時はなるべくカッコ付けようとは思わないで、機能的にこれはココに有るべきな のか?とか、常に機能を最優先で考えます。
ミーティングルームで決定したデザインでも、実際にフィールドテストしてみたら全 然ダメって事は多くあるので、サイクレックスのメッセンジャーにテストしてもらっ
てから煮詰めます。
例えばジップ一つとっても、数ミリ数度でやり直す事もあります。
サンプルを何度も作った物でも仕上がりが納得行かなければワンシーズン見送って熟 成させているアイテムもいくつかあるくらいです。
物凄くメンドクサイ事をやっているワケですが、こういうモノの作り方って、実は フェニックス社は得意ジャンルなんですよ。
オリンピックのスキー選手のウェア作ってる位ですから・・・。
アパレル的な物づくりの手法では無いですよね。
でも、そういうところが好きで自分はフェニックスさんと共同でやる!と決めたんで すよ。
自分の物づくりは、「まず、素材ありき」なので、素材は厳選します。
ここでもフェニックスって凄くて、「なんなの?これ?」っていう先端素材とかが普 通に出てきちゃう。
自分でブランド立ち上げて作るには手配出来ないような素材でクリエイション出来る のはホントに有難い。

今回のスクラッチジャケットなんてケブラー繊維混ぜてるのにストレッチが効いて防 風透湿の3レイヤーで溶着の止水ジップ、オマケに消臭効果があるなんていうジャ
ケットは、世界的にも無いと思います。
ただ、パッと見で凄そうというのはイヤなんで、一見普通だけど実は凄いんです。と いうさり気無さも重要視してます。
デビューの今季はアイテム数が少なすぎますが、10FWあたりからフルラインナップ になって、一気に3倍以上のアイテム数になるので、そこからがホントです。
今季はプロローグにしか過ぎません。

◎読者にメッセージがあればお願いします。

木村:自分が興味を持って熱中出来る事なら、 それがどんなクダラナイ事でも、 とことんやればイイと思う。
やんなきゃ分かんないし。
とことんやれば、どんなアホでも一人前になれる。

こんな感じっす。

◎どうもありがとうございました。
(写真のモデルは木村さんではありません。)


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